10日位前だったか、上記「環境goo」の”容リ法特集ページ”が部分的な取り上げられ方だったけれど話題になっていましたが、改めて特集全体を見渡してみるとよくまとまっている内容ですので、引用を幾つかしつつ「現状の容器リサイクル法の問題点」を整理してみたいと思います。
(以下引用は上記事内より。敬称略)
■「容器リサイクル法」は必ずしも"リサイクル"を目的としていない?!
この制度の狙いのひとつは、最終処分場に持っていくものを減らそうということです。そこで3Rを進める。リデュース、リユース、リサイクル、まずゴミとして処理するものを減らそう、次に同じものを何度も使おう、そして、リサイクルを3番目に位置づけてます。そのリサイクルも、物として使う「マテリアルリサイクル」と、熱として回収する「サーマルリサイクル」の2通りがある。マテリアルリサイクルを優先していますが、材料にするためにコストもエネルギーも過大にかかるなら熱回収でもいいと考えています。現に紙製容器包装については、紙の原料として利用できるものを選別したあと、それ以外の部分は燃料として熱回収を行うことを認めています。(泉 真 厚生省 リサイクル推進室長)「"リサイクル"を目的としていない」は言い過ぎとしても、まず「ゴミとして最終処分場で処理するものを減らす=リデュース、リユースを促進する」ことが順番としてまず最初にあり、そこからリサイクルのスキームを少しずつ確立していこうということです。 佐野 敦彦氏は「リサイクルを進める社会的な仕組み作りのスターターの役割は評価」するとしつつも
リサイクルの仕組みをつくるスターターとしてはそれなりに評価できると思います。ペットボトルのリサイクルの体制が遅まきながら動き出したし、プラスチックも紙容器も、今後なんらかの仕組みができるでしょう。とりあえず、容リ法が動機付けの役割を果たした、これはプラスの側面。 では、費用対効果を考えるとどうか? 社会的な費用があまりにもかかりすぎていないか?これが最大の問題でしょうね。また容リ法の目的のひとつに、企業に再資源化費用を負担させることによって減量化や減容化をうながすというのがありますが、これは必ずしもうまくいってない。 企業にとっても責任分担型のシステムだけれど、負担がさほど大きくないために、表に見えるような形では価格に転嫁できていない。よって、製造原価への組み込みが行われているとは思われません。だから、企業から見れば、利益から持っていかれたという印象が強いでしょう。自治体は、分別収集や住民指導にたいへんな労力とコストがかかっているわりに、スムーズにいかず徒労感を抱いている。お互いが被害者意識を持っている。 そして、法の制定を後押しした市民団体などは、ちっともリサイクルが進まないじゃないかと不満だらけ。三すくみの状況です。でも、前に進んできていることも認識するべきだと思います。佐野 敦彦(株)佐野環境都市計画事務所 代表取締役と、費用対効果の問題で必ずしも現状うまくいっておらず、企業、自治体、市民(団体)が各々不満感を抱えていることも指摘しています。
■ペットボトルについて
リサイクルの最大の問題は、リサイクルすることによって、かえって資源エネルギーや社会的エネルギー、コストをよぶんに使ってしまうということです。 ペットボトルが、石油からつくられるときのコストは約7.4円なのに、リサイクルするには輸送費などの集荷にまず26円かかります。それを洗浄、樹脂化、再成形するには1円程度しかかかりませんが、しめて27.4円にもなる。新品ボトルの3倍以上です。(武田 邦彦 芝浦工業大学教授)
現状では、ペットボトルのリサイクルなど、たしかにエネルギー的に見るとリサイクルの価値がないものは多い。でも、それは使用量そのものを減らしたり、他の容器に転換することで環境負荷を低くする方向に誘導すべきであって、燃やせばいいとなると、大量生産、大量消費の構造は変わらず、さらにドライブがかかるだけです。(安井 至 東京大学 生産技術研究所教授)
ペットボトルについては、静脈ルートが確立しているガラスびんや空き缶と違い、本格的に回収をはじめてまだ3年と日が浅く、一方収集量が急増したため一時保管の事態が生じてしまいましたが、処理工場が新築、増築されており、処理能力が拡大すれば解決すると考えています。 再生品の用途の研究も進んでいます。やはり繊維製品よりは飲料容器にするほうがいいわけですが、日本の消費者は要求が厳しく、曇りがあったり、透明なボトルにちょっと色がついていてもダメだといわれることを気にして、まだ飲料用途へのリサイクルは進んでいません。ところが、PET樹脂の前段階まで戻してまたPET樹脂をつくると、バージン材料と変わらない品質のものができることが実用化されようとしています。数年のうちにペットボトルはペットボトルにというリサイクルが可能になると期待しています。(泉真 厚生省 リサイクル推進室長)容器リサイクルで現状最も問題になっているというか、「処理しきれずに山積みとなっている」ような目に見える状況がある為問題化しやすいペットボトルですが、問題点をまとめると 1.静脈ルートがまだ確立されていない状態であること 2.リサイクルコストのうち回収/集荷の部分の費用が大半を占めていること 3.リサイクル後の再生利用の需要が現状あまり無いこと(今後は飲料容器への再利用技術が進む?) というところでしょうか。 ペットボトルがこれだけ普及した背景について佐野氏が冒頭で3つ程挙げていますが、今後は部分的にはリターナブルびんへの回帰も起こるのではないでしょうか。 ただ、宝酒造吉田氏が指摘するような「企業のリターナブルびんを維持していこうという意欲を、法律が逆にそいでしまっているのではないか。また、回収業者であるびん商・びん問屋のような静脈産業を担っていた会社が徐々に廃業に追い込まれている」状況については危惧しています。
■紙のリサイクル率は限界に近付きつつあり、容器リサイクルも効率を考えるべき
昨年あたりからやや古紙が不足気味という状況になってきた。古紙業界が赤字覚悟で輸出したということもありますが、ひとつには再生紙ニーズが拡大したことが大きい。また、古紙の余剰によって古紙の価格が下がったためにコストメリットが出てきた、そして第3にメーカーが技術革新に努め、質の高い再生紙が生産できるようになった。ニーズの増大、価格、技術、この3つの相乗効果によって古紙利用率が拡大してきたわけです。(中略) ただ、トイレットペーパーなどの衛生古紙は回収できませんし、紙もいろいろな用途に使われていますから、回収可能な数字としては、65%が上限だろうと考えられています。65%の上限に対して回収率56%と、8割5分まで達成しているわけですから、これ以上利用率を向上させよといっても、現実的にはかなりむずかしい。板紙への古紙投入率は9割を超えていまして、これはもう限界です。ふつうの紙は3割ですが、この主力は新聞紙。今後は、印刷・情報用紙で古紙利用を進めることになりますが、回収率が高くなるということは質の悪いミックス古紙が増えてくるわけで、これではいい紙はできません。抜本的な技術開発もおそらく不可能ですし、現状で再生紙の品質を高めようとすれば、かえって環境負荷が高くなってしまう。大居 昌彦 日本製紙連合会 参事容器リサイクル法の対象の中には"紙容器"も含まれているのですが、大居氏は紙のリサイクルが量的にも技術的にも限界に近付きつつあることを指摘しながら、「新聞・雑誌・段ボールの3種類にターゲットを絞ってきた結果これだけ回収率を高めてこれたのであり、「種類が多すぎる紙製容器包装」のリサイクルは非効率であろうことを示唆されています。 (以前からスーパー等で行われている)牛乳パックや、富山市のモデル回収で実施されるという、紙箱や紙袋、包装紙など製紙原料になるものに限定した回収/リサイクルが効率が良さそうですが、名古屋モデル地区で8月からスタートするという「その他の紙製容器すべてを対象にする回収/リサイクル」がどんな結果になるか興味深いです。
■レジ袋有料化/マイバッグ運動の取り組みについて
レジ袋有料化の法制化は見送られ、その代わり容器包装廃棄物排出抑制推進員(3R、スリーアール推進マイスター)を任命することが盛り込まれた。消費者の意識啓蒙などを図ることが狙いである。 レジ袋の有料化が見送られた理由は大きく2つあった。まず、スーパーの団体である日本チェーンストアは有料化に賛成だったが、コンビニの業界団体である日本フランチャイズチェーン協会や日本百貨店協会が反対した。次に、法律で無料配布を禁止すると、憲法に規定された営業の自由に抵触する、レジ袋に対して全国一律の価格を決めると独占禁止法に違反するからと言う。(容器リサイクル法が改正、レジ袋の有料化はどうなった? - nikkei BPnet)上記引用のような理由からレジ袋有料化の法制化は見送られ(自分も「そこまで法律で決めるべきことだろうか?」「有料化がレジ袋利用削減の目的に対し必ずしも有効だろうか?」という疑問から”DPちらかというと反対”というスタンスでしたが)、「事業者の自主的な取り組み」に委ねられることとなりました。 上記nikkei BPnetの記事の中にもあるように「日本フランチャイズチェーン協会は2010年度までにレジ袋を2000年度比で35%削減」「モスフードサービスとローソンが環境省と『国と事業者による自主協定』を結び、削減目標の実現を約束」するなど、事業者からの自発的取り組みが少しずつ広がっているように思います。 また、行政サイド・市民活動サイド各々の立場からこうした動きを促進するような啓蒙活動も草の根的に続けられています。 環境goo特集記事内で紹介されたジャスコのマイバスケット運動は、少し視点を変えたユニークな試みですね。 この項の締めくくりとしてレジ袋有料化/マイバッグ運動に関しての参考になるページへのリンクを幾つか貼っておきます。 ●3R 容器包装リサイクル法(環境省) ●財団法人 日本容器包装リサイクル協会 ●財団法人 食品産業センター--容器リサイクル法 ●容器包装の3Rを進める全国ネットワーク ●3R全国ネット・レジ袋有料化推進チームBlog ●Yahoo!ニュース - 容器包装リサイクル
■最後に
ここまでまとめてみて個人的な感想を少し。 こうして駆け足でまとめてみると、「容器リサイクル」への取り組みがまだ過渡期でこれから更に改善されていくべきものであり、法律自体もそうした動きに合わせて改正されていくべき、とのスタンスは(立ち位置や温度差の違いはあるものの)行政/企業/市民(団体)のどの立場からも見られます。”リサイクル以前にまずレデュース(使用量の減少)・リユース(再利用)を”といった考え方もまた、浸透してきているように思います。 「製品の容器」というものは実は「最終消費者の消費スタイル」に大きく影響されます。・・・・ペットボトルがこれだけ普及したのは消費者側での「軽量で持ち運び出来て飲み残しが出来て飲み終わってもそれほど邪魔にならない」という利便性が大きな要因でした。(生産者側には「軽量ゆえ輸送コストが下がる」というメリットも当然ありましたが) 「消費スタイル」は、勿論時代の流れによって移り変わっていくものですが、『資源をできるだけ消費しない消費スタイルのほうがカッコイイ(矛盾してますけどねこうした言い方自体)』的な流れが生まれれば、企業側もそれに追随せざるを得ない・・・そうして考えると「消費者一人一人の意識/行動」のありようが最も影響力を持つジャンルでもあるのです。 ・・・かって飲料系で「薄肉化されたワンウェイのガラス容器」が流通した時期がありましたが、10年と持たずして市場から消えていったのを覚えている人も多いでしょう。あれは結局「消費者がリサイクルもされず容器が町に散乱していく状況」に『ノー』とはっきり言えたからで、あの時のような”スタンスの明解さ”があれば「容器リサイクル」のスキームも少しずつ良くなっていけるだろう、そう考えています。 5/5追加 ●エコマネー、全国展開は延期 レジ袋有料化で方針変更(asahi.com)EXPOエコマネーは2年前の愛知万博で注目された。レジ袋を断ったり、環境学習会に参加したりといった「環境に配慮した行動」をするとポイントがついて、エコ商品に交換したり植林活動へ寄付したりできる仕組みだった。(中略)しかし、準備の過程で、協力を求めていたスーパー側に「レジ袋の有料化により、手間や費用をかけてエコマネーを介在させる意味はなくなる」と否定的な意見が強まった。「レジ袋有料化推進運動」を進めるのはいいんですけど、一方で”ちょっと違うかたちでの取り組み”が消えていくのだとしたら残念。 こういうことからも分かるように、「環境への取り組み」って単眼的な見方だけではだめなんですよね。
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