江戸時代を情緒豊かに描いた漫画やエッセー、江戸風俗の研究などで知られた文筆家の杉浦日向子(すぎうら・ひなこ、本名鈴木順子=すずき・じゅんこ)さんが22日、下咽頭(いんとう)がんで死去した。46歳だった。(後略)
「断筆宣言」をしてからもう10年以上経つのでしょうがないとも言えるが、”文筆家・江戸文化研究家”としてニュースでは伝えられているが、自分にとっては「漫画家・杉浦日向子」としての存在感の方が遥かに強いのでそこで違和感を憶えてしまった。(勿論、断筆後のエッセー集も読んでいるが、最初期の作品からリアルタイムで読んでいる身にしてみればやはり”漫画家”としての印象が強いのである)
思えば、杉浦日向子が最初の表現手法として「漫画」を選んだのは「”戯作者、浮世画家”への憧れ」であり、また詳細な時代考証を(野暮になる事なく)記述する手法として優れていたからではないだろうか? 後記の代表作 「百日紅(さるすべり)」では、北斎の娘お栄に”漫画家としての表現力の限界を感じている作者自身”を投影しているように見えてしかたがなかったのだが。
文筆家としての作業に飽き、もう一度漫画という名の「浮世絵」を書き始める事を密かに楽しみにしていたのだが、それも遂に叶わぬ事となってしまった。
ご冥福をお祈りいたします。
百日紅 (上)
百日紅 (下)
杉浦 日向子
コメント